物言うポテト

Unsilent Potato

タイトル物言うポテト
監督セインリャントゥン
プロデューサーピョーゲー
制作国ミャンマー
制作年2016
VDP上映年2019 -ジャスティス-
上映分数22min
使用言語ビルマ語
字幕英語/日本語
タグ女性, 差別, 性暴力, 抗議, 障がい

作品紹介

「ポテト」と呼ばれる、障がいを持つカレン族の若い女性の物語。彼女は2014年に近所に住む既婚者によってレイプされた。男は訴えられたが、婚外の性的関係を持った誘惑事件としてうやむやにされた。しかし、固い意思を持つポテトと家族は、長い間口をつぐんで苦しんできた女性たちとこの事件を共有するため、真実と正義を求めて立ち上がった。

セインリャントゥン (Sein Lyan Tun)

監督

セインリャントゥンはミャンマーの新進映画作家で、彼のドキュメンタリー『物言うポテト』はミャンマーと東南アジアでよく知られた作品である。2015年には、彼の初ドキュメンタリー短編“Charred Brick”がプラハのワン・ワールド国際人権ドキュメンタリー映画祭で初上映された。キルギスタンとインドのワン・ワールドからはピープルズ・チョイス・アワードを受賞。テレビ・ドキュメンタリー作品の監督および共同製作も行い、インサイド・レンズというNHKワールド2016年の日本とアジアに特化した新ドキュメンタリー・シリー ズには、“Border Boy”という作品を、NHKの2017年の東南アジア番組、カラーズ・オブ・アジアには、『もう一度 学校へ〜ミャンマー〜』という題の作品を手掛けている。彼は2016年にタレンツ・トーキョーと東南アジア・フィルム・ラボの、2017年にはタイズ・ザット・バインドの修了生となった。現在、2016年のドックス・ポート・インチョンでドックス・スピリット賞を、2017年の日本賞では放送文化基金賞を受賞したドキュメンタリー作品“For me and others like me”に取り組んでおり、初の長編フィクション映画となる“The Beer Girl in Yangon”も製作中。

ピョーゲー (Phyo Nge)

プロデューサー

ピョーゲーはカメラマンで、プロデューサーでもある。彼は中国と中央アジアで国際的な賞を獲得したドキュメンタリー作品“Charred Brick”と『物言うポテト』の制作を手掛けた。

監督へのインタビュー

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

そもそもレイプ事件は法の支配が欠けている事から生じるもので、法の支配が欠けていることがあらゆる社会問題の根源になっています。これこそがミャンマーで直ちに注目されるべき事です。政府は法改正によって努力を強めているようですが、国家の制度や価値観、正義感が根本的に改善されない限り、より良い未来は遠くにかすむばかりとなるでしょう。

監督からのメッセージ

この作品を制作した後、ポテトの物語はミャンマーのサクセス・ストーリーとなりました。彼女は、法廷での3年間のにらみ合いの末、2017年に勝訴しました。このドキュメンタリーによってポテトと彼女の家族は注目を集める事となりました。各地で上映した後、女性たちは皆、ポテトにならって自身の経験について口を開くようになったのです。監督として私は、とても長い間ずっと口をつぐんで苦しんできた女性たちの団体とこの物語を分かち合い、彼女たちを目覚めさせ、真実と公正な裁判のためにあくまで抵抗して闘い、あらゆる犯罪者が法のもとに置かれるクリーンな社会が実現される事を願います。ミャンマー、そしてアジア一帯の人々は、被告からわずかな金を受け取るのではなく、真っ当な正義を求める必要がある事を知らなくてはなりません。あなたがどのような立場であれ、各地でこれと同じ状況が生じているのです。どのレイプ事件もミャンマーの人々によって滅多に公の場で議論されないのは、これを口にする事が恐れと恥じらいを行動原理とする文化によって居心地の悪さをもたらすからです。ほとんどの場合、訴訟は被告が口封じのために被害者に渡すわずかな金銭によって封じ込められています。このドキュメンタリーが「ジャスティス」というテーマに結びつくことになればと思います。

※ インタビューはVDP2019入選の際に行われたものです。

審査員コメント

速水 洋子

京都大学東南アジア地域研究研究所 教授 文化人類学

ポテトと呼ばれるレイプの被害にあった聾唖の女性の豊かな表情が印象に残る。自らの身に起きたことの不当さへの身悶えするほどの怒り、正義を求める強い思いと、父親のいない子への愛情、様々な感情があふれんばかりに表現されて、生きる力が伝わり、悲痛な状況であるはずなのに見る私たちに勇気を与えてくれる。

アウンミン

医師、脚本家、監督

『物言うポテト』は、力強く、そして皮肉がきいたタイトルです。このドキュメンタリー映画は、様々な問題を抱えた複雑な国の腐敗した現状を実によく描いています。この映画で表されているのは、この国では障がいを持つ女性には安全も保護も存在しないという事です。本作の監督は、聴覚と言語に障がいを持つ女性の感情表出を深いところまで見事に描き切っています。障がいを持つ母の子供に対する愛着と愛情や、祖父の孫に対する心からの思いを描くシーンは、人間性を強く確信させ、作品に力強さを与えると同時に、この国の負の側面も明らかに示しています。

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