タイトル | 父を想う |
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監督 | エー・チャン |
制作国 | ミャンマー |
制作年 | 2020 |
VDP上映年 | 2020 -愛- |
上映分数 | 14min |
使用言語 | ビルマ語 |
字幕 | 英語/日本語 |
タグ | 喪失, 学生運動, 武力衝突, 父親, 記憶 |
作品紹介
30年前、ジェニーがまだ小さな子供だった頃、彼女の父は家族の元を去り、軍事独裁政権と闘うビルマ人学生の運動に加わった。父は二度と戻らなかった。現在、ジェニーは成長し、自分の家庭を持つ一人の女性となり、難民支援者として働いている。そんな彼女が革命家だった父の最後の消息をたどり、何十年も続くこの国の争いが彼女の家族や社会に及ぼした影響について考える。このドキュメンタリーは、1980年代後半の紛争の影響を受けながら、失った父親を探し求める娘の姿を細やかに描く作品である。
エー・チャン (Aye Chan)
監督
ミャンマー、モン州のビリン郡出身。5人家族の家に生まれ、両親は商売を営む。モーラミャイン大学で学部生として5年間学び、地質学の学位を取得して卒業。子供の頃から写真と映画に興味を持っていた。2017年にヤンゴンに移り、ミャンマー写真学会とミャンマー・メディア開発センターでそれぞれ、写真と映像編集を学んだ。2018年には奨学金を受け、ヤンゴン映画学校で映画制作を学び、ドキュメンタリーを専攻した。
監督へのインタビュー
このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?
私が主人公のジェニーに会ったのは、2017年にミャンマーのカヤー州ロイコーにいた時です。彼女の父親が1988年の学生運動で亡くなっていたことを知りました。この話を聞いて私は大変興味を持ちました。その後、ヤンゴン映画学校が2019年に「若者と平和」というテーマで映画コンテストを開催しました。それに応募するドキュメンタリーを作ろうと考えていたときに、彼女のことを思い出したのです。彼女はタイとミャンマーの国境沿いで、カヤー難民の支援活動をしていました。撮影班が彼女の活動を知るにつれて、彼女も非常に強い女性であることが分かってきました。彼女の両親の関係も私の関心を引くものでした。テーマを絞ることは難しく感じられましたが、この美しい物語を映画にする方法を何とか見つけることができました。
監督からのメッセージ
2019年、ミャンマーののカヤー州ロイコー市で初めてのドキュメンタリー作品である『父を想う』を撮影しました。本作品は、1988年の学生運動で父親を失ったある家族を中心に描いています。私は人間の本性について学ぶことが好きで、それがこのようなドキュメンタリーを撮影するきっかけとなりました。現実の生活から学べることは多々あります。ミャンマーには多様な民族の中にたくさんの興味深い物語があります。次の作品では社会科学や哲学についてもっと勉強したいと思っています。
審査員コメント
コン・リッディ
作家・映画制作者・タイ国フィルムアーカイブ副所長
この映画には、ミャンマーの変化の風と共に姿を消した父親の生涯をその死後に偲ぶ革命家の子どもの姿が描かれています。このドキュメンタリーは、この国に重大な変化があった後の時代に育ち、大人になった世代の感情を、嘘いつわり無く、直実に捉えています。実際に戦った革命戦士たちが消えて久しい今でも、いかに民主主義の代償が支払われ続けているかを教えてくれる映画です。
関連作品
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母と息子
1988年、ミャンマーの民主化運動に参加した息子をもつ1人の母親。より開かれた社会のために闘い、彼らがはらった様々な犠牲を思い出す。彼女の体験は、ミャンマーの多くの家族の苦悩を反映するとともに、政治活動が犠牲を伴うものだということを私たちに知らしめる。- 国
- ミャンマー
- 監督
- Thwe Myo Nyunt
- 時間
- 17min
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8月の手紙
VDP作品募集の知らせがもたらされたのは、ある映画作家が彼女の父親の命日を追悼するとともに甥の誕生日を祝っていた8月のことだった。彼女は別の映画作家に声をかけ、コロナが引き起こしたロックダウンという状況のもと、2人の共通言語である映像を使って「死と生」のテーマに思いを巡らせた。このドキュメンタリーは、2人の監督やその家族の私的な物語を織り混ぜながら、生と死の意味を静かに思い、今日のベトナムの現代的な生き方や家族の関係を映し出している。- 国
- ベトナム
- 監督
- マイ・フエン・チー(チー・マイ)&スアン・ハー
- 時間
- 26min
速水 洋子
京都大学東南アジア地域研究研究所 教授 文化人類学
1988年のビルマ民主化運動に関わり、軍の手を逃れて行方不明となった父親。その妻と娘たちが20年を経た今、父親を想う様子を、母による若き日の回想や父からの手紙、父の最後の消息を辿る娘、娘の現在の難民に関わる仕事などを通じて、家族の生活をいろいろな局面で見せてくれる。そして父親の妻や娘たちへの愛が、そして民主化への思いが、残された家族の愛ある生活を育んできたことが映像を通じて伝わる。民主化運動そのものを描くのではなく、まだその影響の残る家族とミャンマー社会にあって、一人の男性の思いや行動がどの様に家族や後に残る者に影響をしているかを描いて、余韻が残る作品。