紅酒鶏

Red Wine Chicken

タイトル紅酒鶏
監督グレース・チュン・ライウイ
制作国マレーシア
制作年2020
VDP上映年2020 -愛-
上映分数16min
使用言語マレー語、中国語
字幕英語/日本語
視聴URLhttps://www.youtube.com/watch?v=5aQ0B8JkuSU&list=PLYNr5XeQb9WKuvfE8bHFnUIB3DcQ6hSje&index=46
タグ家族, 料理, 移民, 結婚, 華人

作品紹介

『紅酒鶏』はマレーシアのヌグリ・スンビラン州ブキット・プランドゥックに住むマレーシア人男性と結婚したベトナム人花嫁、アチャオ(阿嬌)を描いた作品。本作では、二人の関係とあわせて、アチャオが家庭内での自分の立場を思案する姿が焦点となっている。福州人の伝統料理である紅酒鶏、それに家族と食事をめぐって物語が紡がれる。人と人との様々な関係のあり方に思いを巡らせる作品である。

グレース・チュン・ライウイ (Grace Chung Lay Woei)

監督

グレース・チュン・ライウイはマレーシアの女性映像作家で、基礎芸術学を学び(2018)、トゥンク・アブドゥル・ラーマン大学でコミュニケーションと放送学の学位を取得した(2020)。結婚式を専門に扱うジャスト・アナザー・プロダクションで編集とカメラのアシスタントを担当。10年前に他界したマレーシア人女性監督ヤスミン・アフマドを偲ぶドキュメンタリー『What Yasmin Left Behind』(2019)では撮影監督を務めた。同作はクアラルンプールのGMBBショッピングモールで行われたイベント『Yasmin Ten Years On』で上映された。

エンジェル・ユエン・イーチエン (Angel Yuen Yi Qian)

プロデューサー

エンジェル・ユエン・イーチエンは、マレーシアの映画作家で、基礎芸術学を学び(2018)、トゥンク・アブドゥル・ラーマン大学でコミュニケーションと放送学の学位を取得した(2020)。『紅酒鶏』のプロデューサー。レブ・アジアで編集アシスタントも務める。このドキュメンタリーは、エンジェルの叔母で作品に登場するベトナム人花嫁のアチャオの存在から着想を得て制作された。

監督へのインタビュー

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

このドキュメンタリーは、プロデューサーの叔母で、この作品の主人公でもあるアチャオから着想を得て作られました。私たちがこの映画を作った理由は、外国から花嫁としてマレーシアに来る女性に対して、社会にある種の差別や固定観念があるからです。もう一つの理由は、マレーシア人の若い世代が自分の文化の伝統料理のレシピを受け継ぐことにあまり興味を示さなくなってきたことです。この映画を見る人に分かってもらいたいことは、本当の愛を見つけるには、たとえそれが一般的な手段ではなくても、いろいろな手段があるということです。そして、自分たちの文化や伝統を忘れるべきではないということについて、皆さんにも考えて頂ければと思います。

監督からのメッセージ

この度、私たちがVDPの上映作品に選ばれたことを光栄に思います。プロデューサーのエンジェルと私は、最高の結果を出そうと一生懸命制作に携わってきました。私たちは全ての制作過程において言い争うことなく、作品に気持ちを込めました。最高の作品を作りたいと思っていたからです。何かを決断するときにもお互いの意見を尊重し合いました。スタッフにも恵まれ、撮影過程は楽しく、刺激的なものでした。前向きかつ楽しい制作現場はこのドキュメンタリーを実現させるために必要不可欠でした。お気づきかと思いますが、本作品は「私」の作品や「私」のプロデュース作品ではなく、「私たち」のものです。撮影スタッフがいなければこのような結果は得られなかったかもしれません。これはすべての映画制作者に心に留めておいてほしい大切なメッセージです。良い作品を仕上げるためには、監督も、制作アシスタントも、誰もが等しく重要な存在なのです。

審査員コメント

山本博之

京都大学東南アジア地域研究研究所 准教授 地域研究・メディア学

マレーシアの少数民族である華人にとって、家系を継承して民族語や料理などの民族文化を継承することはとても大切なことである。近年ではライフスタイルの変化のために未婚化と晩婚化が進んでおり、華人男性が他国の女性と結婚することも珍しくない。ベトナム人女性との結婚は2003年頃から増え、ベトナム人女性を華人男性に紹介する結婚相談所も作られている。本作では結婚して劉(ラウ)ファミリーに迎えられたベトナム人のアチャオが、男の子を産み、華語を学び、義母の料理を覚え、誰からも褒められるが、なぜか涙を流す。

若井真木子

山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波

紅酒鶏を作るアチャオの一日は、まだ日も暗いうちから子どもを学校に送り、市場に買い出しに行くことから始まる。日常にすんなりともぐり込むカメラをあたたかく受け入れながら、紅酒鶏の準備は進む。その合間に語られるのは、夫との出会いや、ベトナムの家族のこと。夫や義母も彼女のことを語りながら、その人となりが見え隠れする、撮影クルーとの不思議な距離感。紅酒鶏がいろんな意味で象徴的なように、彼女が表す愛情にも様々な色合いが見えてくる。