くにを離れて歌う歌

The Songs We Sing in a Different Land

タイトルくにを離れて歌う歌
監督インシャラー・P・モンテロ
プロデューサードクノマズ
撮影監督・編集インシャラー・P・モンテロ
音響マルガリータ・クリコヴァ、タルン・マドゥプ
制作国ポルトガル、ベルギー、ハンガリー
制作年2022
VDP上映年2023 -笑!-
上映分数26分
字幕英語/日本語

作品紹介

『くにを離れて歌う歌』はポルトガルの首都リスボンで働くフィリピン人女性たちのグループにきめ細やかに焦点を当てている。彼女たちは唯一の休日である日曜日に集まって昼食を共にする。異国での生活のこと、家政婦やベビーシッターとしての仕事のこと、遠く離れた家族のこと、さらにはフィリピンの今は亡き独裁者の息子であるフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)大統領への熱心な支持まで、話題は幅広い。本作品は、歌と会話を通じて彼女たちが世界をどのように見ているかを示すと同時に、フィリピンが抱える母親たちの深いトラウマをも映し出している。

インシャラー・P・モンテロ

監督

インシャラーは2012年から映画とCMを制作しており、フィリピン国家文化芸術委員会の国家映画賞を受賞している。2018年にはフィリピン映画開発評議会からフィルム・アンバサダーに指名された。彼女の作品は国連や国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)をはじめとする様々な場所で上映されている。ヴァイスニュースやHBOなどで多数のジャーナリズムプロジェクトにも携わっており、ワシントンポスト紙における彼女の取材チームはアジア出版者協会賞女性テーマ部門のファイナリストに選出された。また、最近、ドクノマズ(欧州のドキュメンタリー映画制作修士プログラム)を優秀な成績で修了した。現在、彼女は都会から離れた場所への移住を考えている。

監督へのインタビュー

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

私はいつも女性に敬意を抱いており、私が制作する映画では女性が重要な位置を占めています。私が子供のころ、母は3つの仕事を掛け持ちして家計を支え、父は家で私の面倒を見ていました。フィリピンでは多くの女性が家族を養っています。 2022年のフィリピン大統領選挙で私は挫折を味わいました。人々が独裁者の息子に投票したために私は国から否定されたように感じました。だからこそ、この作品を制作して、ボンボン・マルコス大統領の支持者たちのことをパーソナルストーリーも含めて理解したいと考えました。大統領を支持する人と支持しない人がいかに違う道を進み、フィリピンのためにすべきことについて異なる理解にたどり着いたのかを理解しようとしました。私は彼女たちと政治的な立場の違いを超えて素晴らしい時間を過ごしました。これこそ最も重要なことであって、そのおかげで対話が生まれ、お互いをよりよく理解し、それぞれの人生経験を尊重する気持ちを共有することができました。

審査員コメント

速水 洋子

京都大学東南アジア地域研究研究所教授 文化人類学

海外の家庭で家政婦として働くフィリピン女性たちの交流を、リスボンを舞台に描いた作品で、彼女たちの家族や国との関係が彼女たちの会話のなかに織り込まれています。現地での生活そのものを描くよりも、あるいは家族との関係そのものを描くよりも、ここで何より映し出されているのは、彼らの表情から読み取れる情感です。自身の家族・国から離れた日々、一緒に笑うことで様々な悲しみややりきれなさを乗り切ろうとする様子が痛いほど伝わる作品です。

エドワード・デ・ロス・サントス・カバグノット

映画編集者、フェスティバルプログラマー、作家、芸術家

ドキュメンタリー映画の良し悪しは人間らしい経験の扱い方にかかっている。本作品はその良い例である。フィクションかノンフィクションかを問わず多くの作品がフィリピン人ディアスポラというテーマに挑戦してきたが、本作品は技術的にも洗練されており、このテーマに関する新たな洞察をもたらすものとなっている。登場するのはそれぞれ異なる政治的意見と情熱的な主張を持った多様なフィリピン人女性が集うグループだ。彼女たちは立場の違いを脇に置いて(それは典型的なフィリピン人のやり方である)、一緒に食べ、歌い、そして心から共感しあう。エンドロールの後で、その映画で議論されたテーマよりも登場した愛すべき人々の存在が観客の心に残っていれば、ドキュメンタリーは本当の意味で成功したと言える。

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