Visual Documentary Project (以下VDP)は、「東南アジアにおける持続型生存基盤研究」プロジェクトの一環として、東南アジアの多様性・混成性・ダイナミズム等の実情を正確に把握するために若手映像制作者との交流を促進しようと、2012年に始まりました。

VDPの主な目的は、①東南アジア研究に携わる者と東南アジア出身の映画作家たちにプラットフォームを提供し、②彼らが体験する現実、それを反映した映画作品を、より幅広い観客、つまり国内外の研究者コミュニティーや市民等に届け、③直面する様々な現状について問題提起をすることです。

それから10年の間、本事業は、活発で洞察力に富んだ交流活動を展開してきました。2014~19年には国際交流基金アジアセンター(JFAC)とのパートナーシップにより、日本国内外で認知度を高めながら交流を深め、さらなる発展を遂げました。これらの成果によって、東南アジアに関する学術研究に新たな道筋を提供することができ、この地域で活動する映画作家と研究者の架け橋を築く扉が開かれました。

VDPでは、毎年テーマに沿って短編ドキュメンタリー作品を募集しています。作品の選考には、文化人類学者や東南アジアにおけるドキュメンタリー映画制作に精通した地域研究者、映画作家、映画評論家などからなる委員会が当たります。これまでに日本と東南アジア地域から、東南アジアに関する約850作品の応募がありました。その後、入選作品には日本語字幕をつけ(2013年度〜)、国際イベントで紹介します。日本と東南アジアで開催してきたこれまでのイベントは可能な限り自由に参加できる形式をとり、その多くは各国のドキュメンタリー映画祭や、その他の学術機関との協力のもと実現しました。ドキュメンタリー映画の社会的影響について議論し、より多くの観客に問題を提起する重要な場となっています。VDPというプラットフォームを継続するためには多くの努力が求められますが、毎回国内外の多くの方に関心を持っていただくことで、そうした苦労が報われているとも感じています。

さらなる議論の深まりに資するため、2023年春にVDPのポータルサイトをリニューアルし、デジタルアーカイブを開設しました。東南アジア地域の諸問題を探ると共に、これまでに紹介してきた作品をより多くの皆さまに利用していただけることを願っています。特に教育者や研究者の皆さまにおかれましては、これらの資料を教材としてご活用いただければと思います(貸出申請ページへ)。

今後もVDPは、プラットフォームとして一層の成長を続け、日本と東南アジアにとどまらない幅広い地域で、映画学校などのパートナーとの絆を深めてまいります。ポストコロナの日本と東南アジアの映画作家、地域研究者、他のパートナーらと共に時間を重ね、この事業を一層発展させてまいります。

VDP事務局長
マリオ・ロペズ

これまでの年度テーマ:

2023 – 笑!
2021 – 死と生と
2020 – 愛
2019 – ジャスティス –
2018 – 東南アジアとポピュラーカルチャー –
2017 – 東南アジアの都市生活 –
2016 – 東南アジア・日常生活のポリティクス –
2015 – 越境する東南アジア –
2014 – 東南アジアの人と自然 –
2013 – 東南アジアにおける多元共生 –
2012 – 東南アジアのおけるケア –

VDP2012-2021アーカイブカタログ: