ラップタイ

RAPTHAI

タイトルラップタイ
監督チラカーン・サクニー、ウィチャユット・ポンプラサート、サルン・コーシットスックチャルーン
制作国タイ
制作年2018
VDP上映年2018 -ポピュラーカルチャー-
上映分数25min
使用言語タイ語
字幕英語/日本語
タグヒップホップ, 文化革新, 歌, 詩, 青年

作品紹介

ラップ・カルチャーが現代タイ社会にどのように定着し影響を与えてきたかを紹介する。タイ文化とラップ音楽固有の伝統のシナジーに焦点を当てた本作は、12人のタイ人ラッパーの物語を取り上げ、彼らが人生経験を通じて様々なスタイルで表現する独自の様子を紹介する。

チラカーン・サクニー

監督

1998年生まれ。スワンスナンター・ラーチャパット大学の3年次生として、スアン・スナン・インターナショナル・スクール・オブ・アートに籍を置く。ラチャダムノーン・コンテンポラリー・アート・センターでドキュメンタリー映画を制作している。タイ・ドック・フィルムで特別賞を受賞。2017年には国際交流基金アジアセンターの…and Action! Asia#04: 映画・映像専攻学生交流プログラムに参加。

ウィチャユット・ポンプラサート

監督

1998年生まれ。スワンスナンター・ラーチャパット大学の3年次生として、スアン・スナン・インターナショナル・スクール・オブ・アートに籍を置く。ショートフィルムコンテスト6+6、Department of Skill Development No.4に入賞、またタイ・ドック・フィルムで特別賞を受賞。2017年には国際交流基金アジアセンターの…and Action! Asia#04: 映画・映像専攻学生交流プログラムに参加した。

サルン・コーシットスックチャルーン

監督

1997年生まれ。スワンスナンター・ラーチャパット大学の3年次生として、スアン・スナン・インターナショナル・スクール・オブ・アートに籍を置く。学生生活と並行して、舞台や映画、コマーシャル、ドラマ、ミュージックビデオのスタッフとしてアルバイトをしている。ショートフィルムコンテスト6+6、Department of Skill Development No.4に入賞、またタイ・ドック・フィルムで特別賞を受賞。2017年には国際交流基金アジアセンターの…and Action! Asia#04: 映画・映像専攻学生交流プログラムに参加した。

監督へのインタビュー

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

ラップをよく知らない人々にラップを紹介したいという目的で、このドキュメンタリーを制作しました。私自身、ラップにはシンプルな美しさがあり、一般的な楽曲よりも優れていると思っています。(多くの人が否定的にとらえている)ラップは皆が考えるほど悪いものではありません。ラップは簡単に作曲できるものではなく、さまざまな制約もあります。詩歌と同じく人々の心を動かすことができる芸術なのです。ラッパーのコミュニティもラッパーたちも人間的に素晴らしい人ばかりですし、白か黒で判断すべきものではありません。だからこそ私は、ラップをより広い視聴者に届けたいという思いでこのドキュメンタリーを制作しました。

制作チームからのメッセージ

『ラップタイ』という言葉は英語の文法的に正しくないのですが、タイではタイ語のラップをこう呼んでいます。問題なのは、私たちがラップとは何なのかを知っていても、タイ語のラップについては知らないことなのです。ラップは文化として広く根付いていますが、タイ文化においてのラップはどうでしょうか?タイ文化とラップを一つにしたものがタイラップで、オリジナルなラップ音楽なのでしょうか?あるいは、タイ語のラップはタイ文化の一部なのでしょうか?この問いにどう答えていいものか、私たちにもわかりません。しかしこのドキュメンタリーの制作を通じて学んだことの一つは、文化とは(他の文化と)交換が可能な何かであり、過去の良い教訓と悪い教訓を基に、新しい文化に発展させることができるということでした。

選考委員コメント

山本 博之

京都大学東南アジア地域研究研究所 准教授 メディア研究

ビデオやYouTubeで世界の最先端を求めながらも、タイの言葉と文化に根差した発信を模索し、新しい伝統芸能を作り出そうとする人たち。「ラックタイ」(タイ大好き)と韻を踏む作品タイトルからは郷土への思いがうかがえる。

石坂 健治

日本映画大学教授、東京国際映画祭シニア・プログラマー

各国に広がったこの音楽ジャンルは、いまや背後の社会の空気を掴み、政治状況への異議申し立てを行う武器にもなっている。そういえば東京国際映画祭で上映されたフィリピン映画『リスペクト』もラップ合戦が見どころの傑作だった。

専門家によるコメント

平松 秀樹

京都大学東南アジア地域研究研究所 連携准教授

比較文学・比較文化研究、タイ地域研究

タイでのラップの普及を筆者が感じたのは、トンチャイ・メッキンタイ(ピー・バード)のメガヒット曲で2010年の「Too Much So Much Very Much」のMVの後半で、本編にもでてくるJoey Boyが登場し二人でラップを歌うシーンを見た時である。既にラッパーとして著名であったJoey Boy がタイpopの第一人者と共演したのである。現在ではメジャーな歌謡曲でもラップのパートがあるし、商品のCMなどでもラップ調で宣伝しているものも少なくない。以前には、女性popラッパーの草分け的な存在であるFha MAFの Fionaのコンサートを観たことがあったくらいであり、辛くてやめたいと語っていたのが印象的であった。
 本編では、ラップはタイ語の表現形式にうまく合っているというコメントが何回も出てきたが、それについて少し考えてみたい。タイ語そのものが、特徴として「語呂合わせ」的な表現を非常に好むという点は同意できる。一例を示せば、タイの「12人姉妹」の映画(1981)では、テーワダー(天人)、テーワドー、テーワデーや、ヤクシャー(夜叉)、ヤクセー・・・といった表現が多用されている。ラップの表現形態を受け入れやすい土台となっているといえよう。
 またビデオでは、ラップは何事も表現を自由にできるという意見が強調されていた。筆者がここで思い浮かべるのは、ラップと直接の関係はないものの「ラム・タット」ลำตัดというタイ伝統の即興掛け合い歌である。歌垣にも似て男女の恋愛感情を即興的に表現するほか、往々として社会風刺や土地の権力者への風刺的な表現を唄い、相手はそれに気の利いた返しを同じく即興的に行う。どれくらい風刺やエッジが効いているかは本人の力量次第で、簡単にみえて熟達するにはかなりの修練が必要である。
 このようにラップの表現方法や表現内容は、タイの既存の表現形態と上手く重なり合う点がある。ビデオでは、作今ではタイの伝統的な楽器ラナートなどとのフュージョンも行われているということであるが、今後どのように発展していくか注目である。
 ただし、タイ語でいうカム・ヤープคำหยาบという粗言的言葉を多用し過激な表現をストレートに出す自由表現手段としての本編でのラッパー曲は、メジャーなpop曲でのパートとして歌われるラップとは異なり、地上波に乗る際などに規制を受けてしまうのは他の国々と同様である。政権批判した直近のประเทศกูมีのRAP AGAINST DICTATORSHIP(2018年10月)は日本でも話題になった。
 なお、本編中、ラップで途中口ずさまれる曲の例に、「生きるための歌」バンドแฮมเมอร์のปักษ์ใต้บ้านเราという歌が使われているのは興味深い。さらに、間違っていなければビデオに登場するアーチストは、Joey Boy(โจอี้ บอย)、Thaitanium (ไทยเทเนี่ยม)、UrboyTJ (ยัวร์บอยทีเจ)、ปู่จ๋าน ลองไมค์ (Phujhan Microphone Checker)、กอล์ฟ ฟักกลิ้งฮีโร่、อุ้ย ICE Maiden?などである。