シンプル・ラブストーリー

A Simple Love Story

タイトルシンプル・ラブストーリー
監督ニン・パ・パ・ソー
撮影班レー・レー・エー、アウン・サン
制作国ミャンマー
制作年2017
VDP上映年2020 -愛-
上映分数21min
使用言語ビルマ語
字幕英語/日本語
タグLGBT, ヤンゴン, 家族, 男らしさ, 芸能

作品紹介

『シンプル・ラブストーリー』は、現代ミャンマーに暮らすトランスジェンダー男性とトランスジェンダー女性との、あまりシンプルではない愛に迫ったドキュメンタリー作品である。本作はこのカップルが直面する葛藤を克明に描き出し、彼らをビルマ社会が抱える問題の核心に据える。それはトランスジェンダーの人々が持つ違いを未だに受け入れないこの社会で、彼らがどのように自分たちの愛に折合いをつけるのかという問題である。

ニン・パ・パ・ソー (Hnin Pa Pa Soe)

監督

1990年ミャンマー生まれ。彼女が自分のセクシュアリティを受け入れたのは12歳の時だったが、周囲に多くの困難や制約、差別があり、堂々とカミング・アウトすることができなかった。心理学部を卒業した後、人権や女性の権利、ジェンダーに基づく暴力など数多くのワークショップや研修会に参加し、様々な青年活動やLGBTが主催する活動にもボランティアとして積極的に参加した。2016年には『シンプル・ラブストーリー』の撮影を開始し、2017年のワタン映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を獲得した。そのような賞を受賞したにもかかわらず、ラストシーンの台詞に問題があるということで、現地当局から上映許可が下りなかった。最優秀ドキュメンタリー賞の受賞と、彼女が検閲官の指示に従うのを拒否したことが世間の注目を集め、彼女はミャンマーのLGBTの権利の擁護者として一躍有名になった。

レー・レー・エー (Lei Lei Aye)

撮影班

レー・レー・エーはレズビアンの映像作家で、カメラウーマンでもある。LGBT映画や女性の権利推進のための映画を何作か制作している。『シンプル・ラブストーリー』では音声録音を担当した。彼女は『My Mother is Single』(2014) や『Soulmates』 (2014)、『The Story Teller』(2015)、『Valley Flower』(2016) の 制作にも携わっている。

アウン・サン (Aung San)

撮影班

カチン州出身で人権映画学校を卒業。家を出て、映画の仕事に対する情熱を追いかけ、ヤンゴンでフリーの撮影技師になるべく奮闘中。

監督へのインタビュー

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

私の作品はミャンマーの主流映画によく見られるLGBTの誤ったキャラクター設定に反論するものです。私は2017年のフィルム・ワークショップの研修生でした。当時、私は期間中にフィルム・プロジェクトを完了させなければなりませんでした。よい話はないかと探した末、二人のトランスジェンダーの友人のラブストーリーに基づくドキュメンタリー映画を監督することに決めました。二人の話がとてもユニークだったので映画化の機会を逃したくなかったのです。この物語はトランスジェンダー男性とトランスジェンダー女性のラブストーリーで、ジェンダー・アイデンティティの常識に挑んだ作品です。しかし、ビルマ社会はLGBT のコミュニティを受け入れられません。今も、LGBTQIA+(様々な性的マイノリティ)の人々は差別の下で悪戦苦闘しています。それにもかかわらず、トランスジェンダーの男女の間の愛は、社会だけでなくLGBTQIA+のコミュニティからも受け入れられていないのです。私が指摘したいのは、愛にはジェンダーなど関係ないという事実です。

Film Flyer

審査員コメント

速水 洋子

京都大学東南アジア地域研究研究所 教授 文化人類学

トランスジェンダー同士の恋愛譚。主人公のキャラクターとストーリーで見る者をやるせない気持ちへと誘う。大上段に構えてトランスジェンダーに対する社会的な受容の如何にふれるよりも、むしろ彼らをめぐる愛は、家族愛にせよ報われない恋愛にせよ、誰にとっても身近なもので、特異なものではないことを訴えることで共感を呼ぶ作品。監督自身こだわりの最後の一句がこのことを物語っている。

コン・リッディ

作家・映画制作者・タイ国フィルムアーカイブ副所長

このドキュメンタリーは、力強く、新たな気づきを与えてくれる作品で、ミャンマーにおけるジェンダーの多様性がありのままに語られています。そこには、今もジェンダーの平等に向けた闘いの途上にあるこの国のトランスジェンダーの人々をめぐる喜びや偏見、そして現在も続く苦闘の物語が描かれています。この作品の主題には、見る者を妙に惹きつけ、最初から最後まで我々の注意を捉えて離さない力があります。