上映会

京都上映会

日時: 2019年12月12日(木)13:30-18:00[開場13:00]

場所: 東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念館・大会議室

言語: 日本語/英語 (通訳あり)

主催: 京都大学東南アジア地域研究研究所

共催: 国際交流基金アジアセンター

プログラム

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東京上映会

日時: 2019年12月14日(土) 13:30-18:00 [開場13:00]

場所: 東京ウィメンズプラザ

言語: 日本語/英語 (通訳あり)

主催: 国際交流基金アジアセンター

共催: 京都大学東南アジア地域研究研究所

プログラム

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作品紹介

私たちは歌で語る / Through Songs, We Share Stories

監督 Director: Dony Putro Herwanto

撮影地 Location: インドネシア / Indonesia

24min

ある出来事を巡る真実を次の世代に伝える手段にはいろいろなものがある。歌を通して伝えることはその一つだ。ディアリタ合唱団は、1965年に自分たちが経験した出来事の真実を歌にする道を選んだ。その歌詞は、両親・友人や自然の美しさ、そして祖国への愛を謳いながらも、この歴史的な出来事の暗い側面を理解するための別の見方を提供する。

 

監督: ドニ・プトロ・ヘルワント

1983年東ジャワ州ガウィ生まれ。現在「DAAI TV」でドキュメンタリープログラム担当のジャーナリストとして働く。制作したドキュメンタリー作品がインドネシアのドキュメンタリー映画祭に入選し、アルジャジーラ国際ドキュメンタリー映画祭2015、クアラルンプール・エコ映画祭2019、マカオのサウンド&イメージチャレンジ映画祭2019などの海外の映画祭で最終選考に選出された。現在、妻子とともに西ジャワ州ボゴールで暮らしている。

撮影・編集: アブル・アラ・マウドゥディ・イルハムダ

ジャカルタ生まれ、現在もジャカルタ在住。大学で放送学を専攻。写真への興味がきっかけでテレビ局のドキュメンタリーのカメラマンになり、映像作家としても活動中。インドネシア国内の映画祭でいくつかの作品が入選した。

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

インドネシアで起きた1965年の大虐殺の生存者のために発言の場を提供したかったためです。過去の傷口を開くためではなく、生存者が経験した暗い歴史を、獄中でつづられた歌を通じて示すためです。

審査員のコメント


落ち着かない土地 / An Unquiet Land

監督 Director: Nguyen Thi Khanh Ly

撮影地 Location: ベトナム / Vietnam

28min

ホーチミン市の新都市計画が進む2区の中にあるトゥーティエムとアンフー地区に、1000平方メートルもの土地を持つ74歳のホンさんは、幸運にも土地の収用を免れたが、彼女の5人の子供たちは土地を収用されてしまった。今、彼女の唯一の願いは、残された土地を自分と子供たちのために守り抜くことだ。

 

監督: グエン・ティ・カーン・リー

ホーチミン市を拠点とするフリーのドキュメンタリー映画作家。べトナムで最も人気の高いオンライン新聞「Vnエクスプレス」にベテラン記者として勤めて4年目になる。
現在はダナンでコミュニケーション・エグゼクティブを務めている。彼女が監督した初のドキュメンタリー映画“Below the Boulevard”(16)は、戦争で障害を負った60歳近くの兵役経験者が、南北ベトナムの統一以来、娘の明るい将来を願いながらホーチミン市のボートで暮らす物語だ。2017年にはルアンパバーン映画祭の映画制作ワークショップでASEAN映画作家10人の1人に選ばれ、“TheGiving” というドキュメンタリー映画を監督した。

編集: グエン・トゥ・フオン

ホーチミン市を拠点とするフリーの映画作家。ホアセン大学卒。メディア・プロデューサー。彼女がドキュメンタリー映画に関心を持つのは、人間感情のありさまを深く探り、その社会問題との関わり合いを体験する上で最適な方法だと考えるためだ。メディア・プロデューサーとして働くかたわら、アトリエ・ヴァランのワークショップでドキュメンタリー映画制作の講座を受講し、監督として初のドキュメンタリー映画“Immortal Angel” (16)を制作した。;

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

私はサイゴン(ホーチミン)生まれではなく、サイゴンへは10年前に移住してきました。トゥーティエムは橋の向こう側の地区で、私が住む辺りと河で隔てられています。私が毎日通勤する道のりは感覚的に耐えがたいもので、無秩序なブルドーザーや掘削機の間を通り抜けて行くのですが、そこでは衝突音やガチャガチャ、ガンガンといった騒音が、この巨大建設現場のような場所にかろうじて残っている粗末な家を一つ残らず張り裂かんばかりに響いています。トゥーティエムは日に日に変化しています。天に届くような新しい建造物は、これらの小さな家を今にも飲み込むかのようですが、それでもこれらの家は残っています。彼らの粘り強さは私に大きな疑問を投げ掛けました。どうして彼らはこの小さなオアシスに留まる事にこだわるのだろう?初めてホンさんに会った時、彼女はノンラー(菅笠)を被って自宅の前に立っていました。その光景と対照的に、対岸には高層ビル群を従えた華やかな地区が並んでいました。74歳の彼女は、その人生の13年の歳月を費やして自分の5人の子供達のために土地を守ろうと戦ってきました。私は好奇心から撮影を始めましたが、ホンさんとの出会いは別世界への扉を開き、私ははからずも庶民が政府を相手どって法廷闘争を行う冒険譚に引き込まれてしまいました。彼らは巨大な風車にほとんど勝ち目のない戦いを挑み、それでも諦めようとしない現代のドン・キホーテなのです。

審査員のコメント

監督からのメッセージ

「ドキュメンタリー映画が無い国はアルバムが無い家族のようなものだ」という意見に同感です。私はドキュメンタリーに心を奪われてしまいました。映画はコミュニケーションの一手段で、ジャーナリズムと映像的美学とが一体になって調和しています。ドキュメンタリー映画は、現実が消えてしまう前に歴史を記録するという重要性があり、より平等な社会の実現に向けて発言する上でも役立ちます。この事は、ベトナムという急速に発展する国の状況に特によく当てはまります。サイゴン(ホーチミン)に移住して来た10年前から、私は急激な変化を目にしてきました。トゥーティエム地区はかつて都市と田園が混在する河岸地帯で、暮らす人々の心が安らぐ故郷でしたが、今では巨大都市計画のために争いが生じています。現在は歴史的に重要な時期で新たな巨大都市計画がこの地域を飲み込んでしまう前にできるだけ速やかに記録に残しておく必要があります。この作品は歴史の抹消との闘いなのです。


叫ぶヤギ / Screaming Goats

監督 Director: Thunska Pansittivorakul

撮影地 Location: タイ / Thailand

22min

「タイ南部の国境地帯は危険で恐ろしく、住むべきところではない、暴力に満ちた場所だ。」メディアはたいていこの地方をこのように紹介する。しかし、南部の国境地帯は、実際にはどのようなところなのだろうか。この作品は、女性同士のカップルの目を通じて、この地方についてのもう一つの見方にいざなう。

 

監督: タンサカ・パンシッティウォラクン

1973年バンコク生まれ。チュラローンコーン大学で美術教育を学ぶ。2004年の第四回台湾国際ドキュメンタリー映画祭でドキュメンタリー映画“Happy Berry”が最優秀賞を受賞。2005年の第10回釜山国際映画祭で「Heartbreak Pavilion」がプサン・プロモーション・プラン(PPP)の最高賞を受賞。2007年にはタイ文化省現代芸術局が毎年傑出した芸術家1人に送るシルパトーン賞を受賞。作品が上映された国際映画祭は、ベルリン、ロッテルダムなど他多数。

出演: アンティチャー・セーンチャイ

彼女は本作品の出演者。タイ南部の国境地帯パタニに住み、ムスリム地区であるパタニでLGBTの団体を設立している。プリンス・オブ・ソンクラー大学のパタニ・キャンパスで哲学の非常勤講師を務めた経験がある。アート(絵画)・セラピストで、LGBTの人権擁護活動家でもある。2013年に彼女が設立して運営を担ったBUKUは、パタニ県でフェミニストの書店やジェンダーを問わないサッカー・クラブ、女性福祉の場を運営する団体である。BUKUは反抑圧、交差性(intersectionality)フェミニズムと人権の枠組み内でSOGIESCの権利保護とLGBTおよび女性の福祉と男女平等の推進に向けてタイ南部の三県で活動している。

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

私は東南アジア現代史を専門とするベネディクト・アンダーソン教授と2005年以来の個人的な知り合いでした。彼は私に多くの提案をしてくれ、その中に「南部国境地帯の紛争について映画を撮ってはどうか」というものがありました。私がこの地域の出身者で、国境からわずか30分ほどの距離に私の田舎があったためです。この問題については、ごく表面的にですが、以前の作品で触れた事があります。“This Area isUnder Quarantine”(08) や“The Terrorists” (11)などの作品で、問題を抱える地域からさほど遠くない所で起きた事件の話です。しかし、私は思い切ってこの地域に実際に足を踏み入れた事はありませんでした。アンダーソンは2015年に亡くなりました。タイで軍部によるクーデターが起きてから間もない頃でした。この事があり、私は自分が以前の作品で触れた事のない南部国境地帯と超国家主義のテーマを検討する事になりました。これら全ての事柄はベネディクト・アンダーソン(1936-2015)に対する追悼の意となってこの作品に表れています。

審査員のコメント


あの夜 / That Night

監督 Director: Jeremy Luke Bolatag

撮影地 Location: フィリピン / Philippines

20min

2016年9月2日にフィリピン・ダバオ市のロハス夜市で起こった爆弾事件の二人の生存者に、その後の生活を取材した。爆発で重傷を負った市場の露店商と、マッサージ中だった妻と息子を爆発で亡くしたトラック運転手の二人を中心に語られる。二人の生存者の悲劇から一年後の記録である。

 

監督: ジェレミー・ルーク・ボラタグ

ジェレミー・ルーク・ボラタグはフィリピンの新進映画作家で、フィリピン大学フィルム・インスティトゥートでは映画で文学士号を取得、優秀な成績で卒業している。彼の卒業制作の短編『あの夜』は国内外の映画祭で上映されてきた。現在はフリーの映画作家だが、受賞歴があり国内外に顧客を抱えたポスト・プロダクション会社のメディア・イースト・プロダクションでも働いている。

ラインプロデューサー: アルン・シン

アルン・シンは長年のインディペンデント映画ファンで、プロデューサーは本作が初体験である。意欲的な作家でもある彼は、デ・ラ・サール大学のマラテ文芸誌協会の栄誉あるOBでもあり、同協会からマイクロ短編小説を二編出版している。現在、彼は人材開発およびカルチャー・リーダーとして、大手の多国籍IT企業に勤めている。余暇はテレビゲームやボードゲーム、ギターの演奏、短編小説の執筆などを楽しんでいる。

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

私もダバオ市の出身なので、『あの夜』のテーマには非常に思い入れがあります。この映画は戒厳令が敷かれたフィリピンのミンダナオでの対テロ戦争を取り上げ、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領のもとでのこの国の今の政治情勢を浮き彫りにします。このドキュメンタリーは悲劇の中にあるフィリピン人の精神力と打たれ強さを捉え、登場人物を通じてジェンダーや宗教、社会階級に関する分析を提供しています。

審査員のコメント


物言うポテト / Unsilent Potato

監督 Director: Sein Lyan Tun

撮影地 Location: ミャンマー / Myanmar

22min

「ポテト」という名の、障がいを持つカレン族の若い女性の物語。彼女は近所に住む既婚者にレイプされた。男は訴えられたが、婚外の性的関係を持った誘惑事件してうやむやにされた。しかし、固い意思を持つポテトと家族は、長い間口をつぐんで苦しんできた女性たちとこの事件を共有するため、真実と正義を求めて立ち上がった。

 

監督: セインリャントゥン

セインリャントゥンはミャンマーの新進映画作家で、彼のドキュメンタリー『物言うポテト』はミャンマーと東南アジアでよく知られた作品である。2015年には、彼の初ドキュメンタリー短編“CharredBrick”がプラハのワン・ワールド国際人権ドキュメンタリー映画祭で初上映された。キルギスタンとインドのワン・ワールドからはピープルズ・チョイス・アワードを受賞。テレビ・ドキュメンタリー作品の監督および共同製作も行い、インサイド・レンズというNHKワールド2016年の日本とアジアに特化した新ドキュメンタリー・シリーズには、“Border Boy”という作品を、NHKの2017年の東南アジア番組、カラーズ・オブ・アジアには、『もう一度 学校へ〜ミャンマー〜』という題の作品を手掛けている。彼は2016年にタレンツ・トーキョーと東南アジア・フィルム・ラボの、2017年にはタイズ・ザット・バインドの修了生となった。現在、2016年のドックス・ポート・インチョンでドックス・スピリット賞を、2017年の日本賞では放送文化基金賞を受賞したドキュメンタリー作品“For me and otherslike me”に取り組んでおり、初の長編フィクション映画となる“TheBeer Girl in Yangon”も製作中。

プロデューサー: ピョーゲー

ピョーゲーはカメラマンで、プロデューサーでもある。彼は中国と中央アジアで国際的な賞を獲得したドキュメンタリー作品“CharredBrick”と『物言うポテト』の制作を手掛けた。

このドキュメンタリーを制作した理由は?
どのようないきさつからこのテーマに取り組むこととなりましたか?

そもそもレイプ事件は法の支配が欠けている事から生じるもので、法の支配が欠けていることがあらゆる社会問題の根源になっています。これこそがミャンマーで直ちに注目されるべき事です。政府は法改正によって努力を強めているようですが、国家の制度や価値観、正義感が根本的に改善されない限り、より良い未来は遠くにかすむばかりとなるでしょう。

審査員のコメント

監督からのメッセージ

この作品を制作した後、ポテトの物語はミャンマーのサクセス・ストーリーとなりました。彼女は、法廷での3年間のにらみ合いの末、2017年に勝訴しました。このドキュメンタリーによってポテトと彼女の家族は注目を集める事となりました。各地で上映した後、女性たちは皆、ポテトにならって自身の経験について口を開くようになったのです。監督として私は、とても長い間ずっと口をつぐんで苦しんできた女性たちの団体とこの物語を分かち合い、彼女たちを目覚めさせ、真実と公正な裁判のためにあくまで抵抗して闘い、あらゆる犯罪者が法のもとに置かれるクリーンな社会が実現される事を願います。ミャンマー、そしてアジア一帯の人々は、被告からわずかな金を受け取るのではなく、真っ当な正義を求める必要がある事を知らなくてはなりません。あなたがどのような立場であれ、各地でこれと同じ状況が生じているのです。どのレイプ事件もミャンマーの人々によって滅多に公の場で議論されないのは、これを口にする事が恐れと恥じらいを行動原理とする文化によって居心地の悪さをもたらすからです。ほとんどの場合、訴訟は被告が口封じのために被害者に渡すわずかな金銭によって封じ込められています。このドキュメンタリーが「ジャスティス」というテーマに結びつくことになればと思います。

 

 

上映会コメンテーター

石坂健治

日本映画大学教授・学部長/東京国際映画祭「アジアの未来」部門プログラミング・ディレクター

若井真木子

山形国際ドキュメンタリー映画祭・東京事務局

倉沢愛子

慶應義塾大学
名誉教授

坂川直也

京都大学
東南アジア地域研究研究所
連携研究員

ピヤダー・ションラオーン

天理大学 准教授

青山和佳

東京大学 東洋文化研究所
教授

小島敬裕

津田塾大学 学芸学部
准教授